ECサイト制作の相場と発注/構築前に確認すべきポイントについて解説

目次
はじめに
この記事を見るべき方
- ECサイトの制作を検討している事業者、担当者様
- どのプラットフォームを使用したら良いかわからない方
ECサイトの運営は商品力はもちろん、ユーザーに商品を認知させ、魅力を伝えて購買意欲を掻き立てるために見やすく情報が整理されたサイトでユーザーを迎え入れる必要があります。
ECサイトはオシャレなデザインでブランドイメージを定着させることも重要ですが、最大の目的は「商品が売れる」ことです。
さらにECサイトは単なるウェブサイトの制作以上に考慮すべき点が多く、慎重な準備と計画が必要です。
費用についても、初期の構築費用だけでなくその後の運用保守や販促や広告宣伝費などのランニングコストも考慮しておく必要があります。
本記事では、ECサイト制作を検討している事業者の皆様に向けて、相場や依頼時の重要なポイントや予算の考え方について解説していきます。

1. 予算設定と費用の考え方
結論から言うと、ECサイトを構築する際の予算は初期費用だけではありません。
ASPを使う場合はサービス利用料やドメイン、運用を外部に依頼する場合は運用保守費用も必要です。
- 初期構築費用
- ランニングコスト
(サービス利用料やドメイン、保守運用)
前提として、ECサイトの開設を考えている事業者は上記の2点(構築フェーズと運用フェーズ)を踏まえた予算設定をしておく必要があります。
初期制作費用の目安(個人的感覚値)
規模 | 構築方法 | 構築価格帯(万) |
小規模 | Shopify/Makeshop/BASE | 30〜100 |
中規模 | Shopify、futureshop、EC-CUBE | 100〜300 |
大規模 | フルスクラッチ、ASPのコアカスタマイズ | 300〜数千万 |
どこからが大規模になるかは業界や会社によって変わるので一概には言えませんが、
あくまで自分が過去経験した・見てきた感覚値では、MakeshopやShopifyなどのテンプレートを使用する形で機能のカスタマイズも多くない形であれば、100万以下で実装するケースが多いように思います。中規模以上のECサイトではECFORCEやECbeingなどで構築するケースも増えてくるイメージですが、Shopifyなどでも0からオリジナルでデザインを作成する場合は数百万に及ぶこともあります。
細かな部分のカスタマイズや越境EC、フルスクラッチで0からECサイトを構築したいという場合は中規模以上になってくるケースが多いかと思います。
また、Amazonや楽天といったモール型のECは初期のコストが抑えられる、知名度のあるプラットフォームなので開設直後からある程度ユーザーの目に留まりやすいといったメリットもあります。
予算や商材によっては、モール型でショップを開設した方が良いケースもあります。
Eコマースの種類について
Eコマース(電子商取引)、いわゆるECには大きく分けて3種類の形態が存在します。
誰もが知っているAmazonや楽天から、自社オリジナルのショップを構築できるサービスなど以下のようにそれぞれ特徴があります。
種別 | 特徴 | 運営コスト | 初期コスト | 主な構築方法 |
---|---|---|---|---|
![]() スクラッチ | カスタマイズ性が高い サービス終了や仕様変更などの影響を受けない 構築費が高く/保守や定期的なアップデートが必要 | サーバー ドメイン 決済代行 保守運用 | 高 | スクラッチ開発 EC-Cube ecforce |
![]() ASP | カスタマイズが比較的手軽 運用コストが比較的低い カスタマイズに制約あり | ドメイン サービス利用料 保守運用 | 中 | Shopify Makeshop |
![]() モール | モールの知名度が高い 初期費用を抑えて開設できる 自由度は低い | サービス利用料 | 低 | Amazon 楽天 yahoo!ショッピング |
各構築方法とその特徴について
スクラッチ開発
スクラッチは初期費用はある程度まとまった金額になるケースが多いですが、0から制限なく機能などカスタマイズができるため、大規模なECサイトではこの構築方法を選択することがあります。
ただ、中小規模のECサイトで最初から100%デザインにこだわって機能も充実させるなど要望を満たした状態でオープンしたいというのはかなり危険な考え方ですので、大手企業や商品の知名度がある/売上が開設当初から見込める企業様を除いてはASPやモール型での出店を推奨します。
ASP(カートシステム)
ASP(ECカートシステム)を利用する場合、ある程度デザイン性のあるサイトや機能が充実したECサイトの構築は可能です。毎月のサービス利用料が機能やオプションに応じて発生しますが、基本的には高機能なECサイトを開設することが可能です。ShopifyやMakeshopはこの価格帯で構築するケースが多いです。
ただ、Shopifyなどで300万を超えるような見積もりもかなり稀なので、実際は数百万もかからないケースが多いです。
モール型プラットフォーム
モール型の出店はAmazonや楽天ではセール時はかなりのアクセスが見込めること、手数料は取られるものの開設初期からある程度のアクセスがあるため売上が上がりやすいことが大きなメリットです。
ECサイト運営にかかるランニング(運営)コスト
ECサイトを運用するには様々なコストが発生します。
商品が売れると、注文処理や受注/配送メールや配送業務の作業コスト、梱包資材や梱包費も注文に応じて発生しますが、今回は商品が売れるかどうかに関わらず発生するコストを指しています。
- サーバー、ドメイン費用
- ASP(サービス)利用料
- 保守・運用費
①サーバー、ドメイン費用
1点目はECサイトを設置するサーバーとURL(ドメイン)の費用です。
サーバーはShopifyなどのサービスを契約する場合はサービス利用料に含まれるため不要ですが、
EC-CUBEやスクラッチ開発で構築する場合は月額数千円〜 サーバー費用が発生します。
ドメインについては、co.jp など組織向けのドメインでなければ(.com, .jpなど一般的なドメイン)年間で数千円ですので、そこまで大きな負担にはなりません。
②ASP(サービス)利用料
2点目はカートシステムなどの利用料です。
ShopifyやMakeshopなどはサービスの運営元にプランに応じたサービス利用料を支払います。
機能が多くなればなるほど、こちらの月額費用(一部買い切りのオプションもあり)も上がってきます。
サービス利用料にはサーバー費用などが含まれるため、基本的にはドメインとこちらの費用がECサイト運営で必ず必要な経費になりますが、Shopifyなどは特に使用できる機能も多い割には月額費用が安いため、Shopifyをおすすめするケースは増えてきています。
③保守運用費
3点目はECサイト運営の保守運用費です。
スクラッチ開発であれば、サーバー保守やソフトウェア保守で契約することがあるかもしれませんが、ShopifyなどのカートシステムやAmazonなどのモール型でサイトを運営する場合でも、作業代行などで保守運用を契約する場合は業者に対して費用を支払い、作業をお願いすることになります。
費用が発生してしまうなら自社で管理したい、という事業者様も多いですが
社員1人を専属にする場合、1ヶ月2,30万〜費用がかかってしまっている計算になります。
担当を付けることは必要ですが、手間な作業は業者に外注してしまって、他の業務にリソースを注ぐことで結果的に集客や販促にコストをより多くかけることができるようになります。
重要なのは、初期費用だけでなく運用費用まで含めた総合的な予算計画です。安価な提案に飛びつくと、後々の機能追加や改修で予想以上のコストが発生する可能性があります。実際、Web業界にも「安かろう、悪かろう」は存在します。運用に係る細かい作業にも費用は発生しますので、運用まで見据えた中でのトータルコストで検討いただくことがポイントです。
サイトの運用に必要な作業
- 撮影・画像編集・加工
- 商品登録/在庫管理
- 受注/発送/問い合わせ 対応業務
上記の3点がECサイトの運用にあたり発生する主な作業になります。
社内にリソースがない場合は外注や保守契約でサポートするケースも多いですが、サイト規模やECサイト運営に割ける社内のリソースを踏まえて総合的に判断しましょう。
2. 制作会社選定のポイント
見るべきポイント
受注から運用までのサポート体制
1点目は受注から運用までのサポート体制です。
社内でECサイトに詳しい担当者がいる場合は問題ないですが、多くの場合、運営側で詳しい人がいるケースは少ないのではないでしょうか。
そうした場合、制作会社や外部業者に運用保守や運営代行を依頼したりするケースがあると思います。
特に不具合や不備があるとECサイトの場合売上に関わってきますので、大きな機会損失を生む可能性があります。そのため業者の対応スピードが早くサポート体制が整っている業者を選ぶのがベストです。
納品まではサポートが手厚く、納品後のサポートや対応や良くない制作会社もあります。
かっこいいECサイトなどデザインのクオリティは高いものの、ECサイトの運用に関する知識が浅い業者も少なくないです。
ECサイトはかっこいいサイトよりも売れるサイト、そして作ってからがスタートですので、運用など先まで見据えた上で長く運営できるよう業者を選定しましょう。
コミュニケーション(要望の理解度、レスポンスの速さ)
2点目はコミュニケーションです。
ECサイトの追加要望や質問に対して、ある程度その場で回答をもらえるかというのが1つの指標になるかと思います。
窓口である担当者(ディレクター)がECサイト運営や周辺知識があるかどうかも重要です。
一般的なECに関する知識や各プラットフォームの知識や違い、ベストは同業種などの事例や最新のトレンドを追っている担当者だとなお良いでしょう。
3. ECサイトの機能でまず押さえるべきポイント2点
①搭載する機能を明確にする
- 商品管理システムの仕様
- 決済システムの種類と連携方法
- 会員管理システムの機能
- 在庫管理システムとの連携方法
- 配送システムとの連携方法
ECサイトの機能はユーザーが使用する機能と運用にあたって運営側に必要な機能の大きく分けて2種類に分類されるかと思います。
ユーザーが商品を見つけやすく、購入に至るまでに必要な機能を優先度が高いものから予算と相談しながら機能を追加していく形になりますが、運営側の作業コストも軽く見ていると運営自体が続きません。
軽視されがちではありますが、こちらも同様に重要視しておく必要があります。
例を挙げると、ポイント機能などは基本的に必要ないというのが私の見解です。
Amazonや楽天以外のECサイトでポイントを貯めているECサイトがどれくらいありますか?という質問で出てくるECサイトの数は多くて2,3つでしょう。
余程のファンやポイント還元率が高い、などの理由がないと、ポイントにこだわるユーザーはほとんどいないことが多いです。
こうした機能よりも、セールやクーポンで直接金額に反映したりSNSの運用に充てる方が効果的であると考えているため、ECサイトの売上が拡大してきたタイミングでの改修で優先度の低かった機能などを追加する形でも問題ないと考えております。
②デザインにこだわりすぎない
- ブランドイメージとの整合性
- モバイルファーストデザインの重要性
- コンバージョン率を意識したUI/UX設計
デザインにおいては、ブランドイメージと実際のサイトデザインに大きな乖離がないかというのは重要な要素の1つになってきます。
ただ、ハイブランドや有名ブランドなどを除いて、
おしゃれなデザインに時間をかけるより、ユーザビリティや購入導線の設計、販売戦略を立てる方が圧倒的に重要です。
おしゃれな一方で使いづらいサイトはユーザーが離脱する原因になってしまいます。
スマホで訪れるユーザーが大半である以上、そちらの設計や購入導線を最適化するなどデザイン性よりもユーザービリティなど使いやすさにコストをかけるようにしましょう。
ShopifyなどのASPでは一部機能に制約があるケースも多いので、使用するASPでやりたいこととできることが一致しているかどうか、事前に制作会社や担当者に確認を取っておきましょう。
忘れてはいけないのはECサイトの目的は「商品が売れる」ことです。
おしゃれなサイトに憧れがちですが、予算や優先度を正しく整理し、よく考えて決断しましょう。

4. マーケティングとSEO対策
制作段階から考慮すべき要素
以下はECサイトを作る上で、サイトを育て拡大していくにあたって重要な内容になりますので、
ここでは詳しくは説明しませんが、事前に詳細について確認しておくことが大切です。
- 検索エンジン最適化(SEO)の基本設計、アクセス解析の導入
- SNSマーケティング
検索エンジン最適化(SEO)の基本設計、アクセス解析の導入
キーワード選定とコンテンツ戦略: ターゲットとなる顧客がどのようなキーワードで商品を検索するかを徹底的にリサーチし、それらのキーワードをサイト内のコンテンツ(商品名、商品説明、カテゴリ名、ブログ記事など)に自然に組み込む計画を立てます。競合サイトの分析も重要です。
サイト構造の最適化: クローラーがサイト内を巡回しやすいように、論理的で分かりやすい階層構造を設計します。パンくずリストの設定や適切な内部リンクの配置もこれに含まれます。
コンバージョン(CV)設定: 商品購入、会員登録、問い合わせなど、ECサイトにおける重要な目標(コンバージョン)を設定します。これにより、どのような経路でコンバージョンが発生したかを分析し、改善策を検討できます。
SNSマーケティング
アカウント開設と運用体制の確立: 主要なSNSプラットフォーム(Instagram, X (旧Twitter), Facebook, TikTokなど)の中から、ターゲット層と商材に合ったものを選択し、アカウントを開設します。継続的な運用が必要なため、専任担当者の配置や、長期的なコンテンツ企画・投稿スケジュールを立てる体制を確立します。
SNS連携機能の実装
SNSをうまく活用することで、商品の魅力をより伝えることが可能です。
特に令和においてSNSは必須ですので、始めるのは無料ということも考慮すればやらない手はないです。
インスタグラム発でSNSで売れた商品や、Xってバズったことがきっかけになる、といった突然取り上げられて伸びることも稀ではありますが存在しますので、必ずアカウントを開設して発信しましょう。
- ソーシャルシェアボタン: 商品ページやブログ記事に、Facebook、X、LINEなどのソーシャルシェアボタンを設置し、ユーザーが簡単にコンテンツを共有できるようにします。
- ショッピング機能の活用: Instagramのショッピング機能やTikTok Shopなど、SNSプラットフォームが提供するEC連携機能を活用し、SNS上から直接商品購入へ誘導する導線を確保します。
運用段階での施策
- コンテンツマーケティング計画
- メール(LINE)マーケティング戦略
運用段階では特に販促/マーケティングに多くのリソースを投下していくことが多いように思います。
LINEの公式アカウントの運用と合わせてメルマガを配信することをお勧めします。
特に30代以上の年代におけるメルマガは効果的であるケースもいまだに多いです。
メールを見なくなっていることは事実である一方で、適度なメールマガジンの配信は購買につながるケースもまだまだあります。
大事なお客様を取り逃がさない為にも、正しい販促/マーケティング活動を行いましょう。
LINEアカウントの構築/配信代行 や ECの運用保守 でお悩みの方はメルマガの制作代行なども行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
5. 納品後の運用体制
確認すべき支援内容/内製化を見据えた準備
- システムの保守・メンテナンス体制
- 緊急時の対応体制
- アップデート対応の範囲
- 運用サポートの具体的内容
- 管理画面の操作や運用手順を覚える
- 商品の注文から発送までの流れ
- お問い合わせやクレームなどの対応マニュアル
ECサイトの運用において、運用コストを低減するためにはサイトの設計や仕様に沿って上記の項目をマニュアル化して体制を整えておく必要があります。
リリース前のテストや設計段階で制作会社や担当者と擦り合わせておくことが重要ですが、
最終的なユーザーへの対応や責任の所在についてはトラブルの元となりますので、保守契約なども含めて業者と事前にしっかりと話し合い取り決めをしておくことが望ましいです。
特に、保守運用の対応時間については制作会社の営業時間に準ずることも多いですが、
ECサイトは24時間365日稼働しておりますので、土日祝の緊急時についても特に規模が大きいサイトは確認が必要です。
まとめ
ECサイト制作の成功には、以下の要素が重要です
- 適切な予算設定と開設後も見据えた予算計画
- 運用後までサポート可能な業者
- 綿密な要件定義と機能選別
- マーケティングとSEO対策
- セキュリティ対策や運用体制の確立
初期の制作費用だけでなく、長期的な運用コストや必要な施策まで含めて総合的に検討することで、ビジネスの成長に貢献するECサイトを構築することができます。構築業者との綿密なコミュニケーションを通じて、これらの要素を一つ一つ確認しながら、プロジェクトを進めていくことをお勧めします。